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セラフィーナとスィンザ
少女は長い話を終えて、老爺に向かってこうべを垂れた。
「ご理解いただけましたか。もうこれ以上、私達に干渉しないで欲しいのです。ここから先の物語を、あなた方人間は決して探し当ててはならない」
静かだが、有無を言わせぬ言葉。
少女はフードを被り直すと、一歩踏み出した。
彼女が草の根を踏むたび火花が散った。
周囲の霧は消え、闇夜を明るく照らした。
驚きのあまり老爺はよろめき尻もちをついた。
少女の背中が少しずつ遠ざかる。
ふいに、彼女の肩に止まったトカゲが老爺を睨んだ。黒い眼でじっとこちらを見つめてくる。
老爺が感じたのは、息をすることさえ憚られる怒りと警戒。深く強い愛情に守られながら、少女は霧深い山奥へと姿を消した。
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