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「不安があるなら僕に言ってよ。そんな奴じゃなくてさ」
「スィンザは疲れてるだろうと思って。それより、かくれんぼするの?」
「そう。この寝室の中で」
「ベッドの下くらいしか隠れるところないじゃない」
「でもこれだけベッドがあるんだから、どこに潜ったかは分からないだろ。暇つぶしにはなるよ」
空きベッドだらけ寝室。
寂しいような、スィンザの気遣いが嬉しいような不思議な気持ちだった。
「いいわ。私が先に隠れるから絶対に見つけてね」
スィンザが目を閉じて数を数える間、セラフィーナは端っこのベッドの下へ潜り込んだ。消えてしまったカロルのベッドだ。
スィンザの忍び笑いが聞こえ、彼が動き出したのを感じる。ここかな、こっちにいるのかな、なんて言いながら。
しばらくして、ギッと頭の上が軋んでスィンザと目が合った。
「あ。見つけた、セラフィーナ……」
「待って、誰か来るわ」
かすかな足音を捉えて、少女は身を強張らせた。部屋の外からボソボソとした話し声が聞こえる。
スィンザは咄嗟に、セラフィーナと同じベッドの下へ身体を滑り込ませた。
「ね、ねえ。私達、隠れる必要あったかしら。他の蝋燭番の子かもしれないし、もしかしたらご主人様かも」
「ご主人様が僕達の寝てる間に来たことなんてあった?」
「そんなの、分からないけど」
二人はベッドの下から這い出る機会を逸して、そこでじっと息を潜めていた。
きい、と静かに寝室のドアが開く。
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