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「夏姫ツンデレじゃないかーい。おまけに冬姫はこりゃドSかヤンデレルートだわなー」
私は暑さで頭が働かない中、彼の物語を万年筆に乗せてつづっている。
夏の終わりに面白い話はないかと訊ねたところだ。
「つ、つんでれ……???」
昔の思念だからか最近の言葉を知らない。
「ん-とね、素直になれなくて、心とは裏腹な言葉をいっちゃう感じかな」
「ふむ。これは確かに素直になれず、それでいながら長い別れに哀愁を漂わせ悲壮感を醸し出していてだな――」
それから雄弁に聞いたことの十倍の情報量をほっとくと何時までも話し続けるので、キリのいいところで切り上げる。
「あーそうよね。この私は神の声を聴く人物なのかしら。審神者ってやつ?」
「そうだな。お主がその小さな機械で人型の刀を集めるために、イベントとやらに一喜一憂し悲鳴を上げているのを毎晩見ていて着想を得た」
「うっ!」
仕方ないとはいえ同じ屋根の下で暮らしている以上、どうしても油断が産まれてくる。
いや彼にしたら幽霊のようなものなのだから、こちらも遠慮などしてられない。さすがに着替えの時は依代である万年筆にこもってもらうのだが。
「にっ、にしてもせっかくのハーレム展開なのになんで春と秋の姫、死なせちゃうかなー。春は正統派で秋は気まぐれだから最難関攻略キャラで~」
ついつい恋愛シュミレーションゲームのノリで設定を盛ってしまいたくなる。
ブツブツと呟いている私に、
「何を言っておる。お主が毎日のように早く夏が終われー夏が終われーと願っているではないか。だからバッサリと夏と冬だけに焦点を当てたのだぞ」
「いやまーそりゃ、昨今のこの猛暑続きでもういい加減に夏は引退して欲しいってなるじゃない。あーあ、早く寒い季節にならないかなー。――あ」
そりゃ、夏の姫は怒りますわなー。
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