1.猫になりたい

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1.猫になりたい

 引っ込み思案で無口。クラスでもたぶん札つきの陰キャラ。誰からもきっと、尊敬のソの字もされない。そう、僕は『おちこぼれ』以外の何者でもなかった。その自覚は頭にこびりついて片時も離れてはくれない。    中学生の僕の学校生活は、まだ全然軌道に乗る気配がない。自己肯定感を持つことがどうしてもできなくて、僕の"自虐の沼"は文字通り底無しだった。小学校低学年から高学年へと成長する過程で、少しずつ芽生え始めた自我。それが自分自身をこんなにも頑なに縛りつけることになってしまうなんて思いもよらなかった。  中学生になったら、クラスのみんなと普通に会話をして、大きな声で笑い合って、小学校低学年だった頃のように友達をたくさん作って……、そんな学校生活での青春を夢見ていたのに、僕にとってはもうそのハードルはエベレストよりも高く感じてしまう。もう手遅れなのかな……。   『あーいっそ猫になりたい』  いつも思っていた。本当はこんな世界から抜け出したい。誰とも比較されることなくただ自宅にいて、与えられるご飯を食べ、寝たい時に寝る。なんて自由気ままなんだろう。心底憧れる。でも所詮、猫になんてなれるわけがないのだ。
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