2.からだ交換

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2.からだ交換

 飼い猫のネムの死期が迫ったのはちょうどそんな時だった。それはママが僕の生まれる前から飼っていた猫だったので、もう老猫になっていた。  ある日僕が一人で留守番をしていた時に、持病が急に悪化したのだろう、とても痛々しく暴れ、最後に悲痛な叫び声をあげると、ピクリとも動かなくなってしまった。  僕はネムが死んでしまったのではないかという恐怖に、どうしていいかわからず身体がすくんでしまったけれど、ママが死ぬ程悲しむことを思うと、ネムが生き返るよう願って、無我夢中でその体を抱き締めていた。  暫くして我に返った時にはもう、俄には信じられない事態となっていた。     ―― 僕がネムになっている ――     ―― ネムが僕になっている ――  抱き締めている間に立場が逆転してしまったようだった。  まずはこのファンタジー的事態を素直に受け止めてみる。死んだはずのネムの身体は、僕自身の健康体がそのまま転移したのかピンピンしている。そして何よりこの居心地のよさは何だろう。信じられないくらい穏やかな心地。ずっと憧れてた。やっと猫になれた。僕はその喜びをかみしめる。  ふと見上げると”僕”が見下ろしてる。 「やあ、唯人(ゆいと)」 『ネム……。僕ら入れ替わったみたいだ。体調は大丈夫?』 「うん、なぜか大丈夫だよ。唯人の身体に転移してすっかり生き返ったみたいだ」  僕はただ「ニャーニャー」としか鳴けなかったが、ネムにはちゃんと人間の言葉として伝わるようだった。
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