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「つきましたよ」
起こしてくれたのは隣のおばあさんだった。
「すみません」
沙耶は慌てて飛び起きた。
「きっと、疲れてるんでしょう。北海道は美味しいものがいっぱいあるから楽しんでね。地ビールもおすすめよ」
こんな優しい言葉をかけてもらったのはいつぶりだろう。
「ありがとうございます。娘さんのお加減が良くなるように祈ってます」
「あら、ありがとう。大丈夫よ。応援を言い訳に孫に会いに来たようなものだから」
おばあさんは颯爽と降りて行った。
沙耶はキョロキョロしながら、空港に足を踏み入れた。レストランがあるらしい。朝ごはんを食べていないから、お腹が空いている。
レストランに入ると、名物はスープカレーらしい。でも、北海道といえば、海鮮が食べたい。周りのお客さんを見ると、みんなビールを頼んでいる。
『女は酒を飲むな』
俊介のそんな声が聞こえたような気がした。でも、女性も飲んでいる。沙耶は海鮮丼と水色のビールが物珍しくて注文した。
やがて来た丼にはサーモン、ホタテ、いくら、北寄貝、カニが山盛りになっている。外食も久しぶりだ。ビールの色はソーダ水のような水色でそれなのに飲むとビールの味がする。
「はあ、幸せ」
思わず、自分の口から漏れた言葉にびっくりした。
幸せなんだ。お祝いをしてもいいかもしれない。メニューをもう一度、眺めていると網走ビールには『監獄の黒』というのもある。監獄。入ることになるんだろうな。スマホで調べると博物館があるらしい。参考に観に行くことにした。
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