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 郊外にある森林公園の2.3キロの散策コース。  僕達は休みの日の早朝にここに来て、バードウオッチングをするのがお気に入りだ。  二人でここを訪れるのが何度目になるのか、僕にはもう分らない。  君は僕よりもこういうことをちゃんと覚えておく性格だけど、初めの頃ならともかく、10回を超えたあたりからは、僕と同じように分からなくなってるんじゃないかな。 「ジョウビタキ発見」  翼の真ん中に白い大きな印が付いた、スズメと同じくらいの大きさの鳥が近くに飛んできたのを見て、君がコソコソ声で言う。  ジョウビタキはクチバシをカチカチ鳴らす音を響かせながら、しばらくその辺を飛び回っていた。  今ここには、僕達以外の人はほとんどいない。  そんな人気(ひとけ)のない山道を、僕達はできるだけ静かに、気配すらも消すようにして歩いている。小鳥が驚いて、逃げてしまわないようにだ。  こんなふうに静かに山の中を歩いていると、たまに僕は心配になる。  クマに出会わないように、クマ除けの鈴を鳴らしたり、ラジオの音を響かせながら歩いたほうが、本当はいいんじゃないだろうか、と。
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