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2.
僕たちは山の中腹にある見晴らし台に到着した。
この見晴らし台が、僕たちが歩いている散策コースの目的地であり、折り返し視点だ。ここからは上ってきた山を下ることになる。
下りと上りの道は別で、下りのほうが傾斜が緩い分、距離が長い。
さっきとは打って変わって、僕達はその長い下りの山道を、何も話さずに歩いている。
君は僕に言いたいことがある。少し前から、なんとなく感じていた。
そして、僕の思い違いでなければ、僕たちは二人とも同じことを考えている。
多分、とても些細なことなんだ。少し時間を置けば、こんな気持ちは消えてなくなってしまうかもしれない。
しかし、僕の一歩前を歩いている君の横顔を見たら、言葉がするりと口に出た。
「引っ越そうと思う」
もちろん、僕一人でという意味だ。
「そう」
君は少しの間黙っていたけど、やがて静かに言った。
「私も同じことを考えてた」
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