2.

1/2
前へ
/4ページ
次へ

2.

 僕たちは山の中腹にある見晴らし台に到着した。  この見晴らし台が、僕たちが歩いている散策コースの目的地であり、折り返し視点だ。ここからは(のぼ)ってきた山を下ることになる。  下りと上りの道は別で、下りのほうが傾斜が緩い分、距離が長い。  さっきとは打って変わって、僕達はその長い下りの山道を、何も話さずに歩いている。  君は僕に言いたいことがある。少し前から、なんとなく感じていた。  そして、僕の思い違いでなければ、僕たちは二人とも同じことを考えている。  多分、とても些細なことなんだ。少し時間を置けば、こんな気持ちは消えてなくなってしまうかもしれない。  しかし、僕の一歩前を歩いている君の横顔を見たら、言葉がするりと口に出た。 「引っ越そうと思う」  もちろん、僕一人でという意味だ。 「そう」  君は少しの間黙っていたけど、やがて静かに言った。 「私も同じことを考えてた」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加