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店先で、狐が居眠りの仕事を頑張っている間、二人は、狐を満足させる案を練っていた。
「秋なんて、ほっときゃそのうち来るけどな。まあ、せっかく張り切っているみたいだし、なんとか力になってあげたいな」
「そうだ、あの子はビー玉が好きなんだ。私にいい考えがあるよ」
働き疲れ、タバコ屋の二階に戻ると、大事な話があると、ヤァヤァは言われた。桃谷の部屋で聞かされた、夏の終わらせ方、それはとても魅力的だった。
「狐の坊ちゃん、秋はどうして秋と呼ぶのか知っているかい。それは、宇宙に空きを作るからだよ。宇宙には、多くの星があるけれど、中でも、メインの星が、太陽系の惑星八つなんだよ。秋は、宇宙にある太陽系の八つの星すべてを拾い集めると始まるのさ」
桃谷の手には、ヤァヤァが窓辺で見つけた、コーヒーの空き缶があった。中には、ヤァヤァの知っての通り、すでに六つの星が入っている。
「なら、あと二つの星を探さないと!宇宙の空きを広げないと!」
桃谷が、星を集める方法を知っているらしい。子狐は、尊敬のまなざしで、彼の話に耳を傾けた。
「この町には、時折たくさんの星が空を流れていくだろう。それはね、星が地上を恋しがり、旅に出るからなんだよ。市役所前の池へ行ってごらん。きっと大量の星がとれると思うよ」
ヤァヤァは、流星群を頭に思い浮かべ、なんだ、太陽系を捕まえるのなんて、朝飯前だと心が躍った。
数日後、徳島君が運転する原付に乗って、市役所へ向かった。何も知らないヤァヤァに対し、徳島君は計画がうまくいくか楽しみだった。ビー玉を星と勘違いしているような狐なんだし、池に二つガラス玉を落として、拾わせるだけで喜んでくれるはずだ。けれど、タイミングもあるし、難しいところだ。徳島君は、気持ちと連動するように、豪快に音を立て、夜道を爆走する。走るより早い速度に、狐は落とされないか不安になったものの、すぐに楽しくなった。
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