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だからこそ、あたしはきちんと話さないといけないんだろうな。
そう、思った。
「だって、わたくしは全て知っていたのですもの」
「……?」
あたしの言葉に、ユーリと大公閣下が首を傾げている。
「ユーリ、わたくしは貴女が大公閣下の元へ行けば必ず愛されると知っていたの。
そして大公閣下。わたくしは、ユーリが閣下の元へと行けば、両親が閣下の御名前を利用して罪を犯すことも知っていたのです」
名前を呼び、目を見据えて話すあたしに、ユーリは戸惑った表情を浮かべ、大公閣下は僅かに眉間に皺を寄せ目を細める。
「お義姉様……?」
「エミリア嬢、どういうことか説明してもらえるか?」
大公閣下の表情が険しくなるのも当然だ。
あたしの今の発言は、あたしがそうなるように仕向けたと受け取られても仕方のないものだから。
それでもあたしは話を続ける。
この人達に、あたしの真実を。
罪深さを知ってもらうために。
「わたくしには、かつて別の人間として生きていた記憶があります。
ここではない国、ここではない世界の記憶です」
あたしの言葉に、二人とも戸惑った顔をしている。
もしかしたら、断罪劇のショックで頭がおかしくなったと思われているかもしれない。
でも、それでも構わなかった。
「その世界で、わたくしはこの世界のことを物語として読んでいました。
だから記憶を取り戻した時、これから起きる出来事を知っているわたくしなら未来を変えられるかもしれないと思いました」
そうだ。あたしは未来を変えたかった。
両親にも、ユーリを愛して欲しかった。
仲のいい家族になりたかった。
「ですが、わたくしには何も出来ませんでした。
未来を変えようとすると、頭に靄がかかったようになり、自分が自分ではなくなるような感覚に襲われました」
黙って話を聞いていたユーリが、何かに気が付いたように「あっ」と小さく声を上げる。
「もしかして、お義姉様があの時自分で足を刺したのは……」
ユーリの言葉に頷くことで肯定を伝える。
大公閣下には賊に襲われたと伝わるようにしたはずだけど、今のユーリの言葉に特に反応がないということは、あたしが自分で足を刺したことも知っているようだ。
「エミリア嬢が自分で足を刺すのも、決められた未来だったのか?」
「いいえ」
大公閣下の質問に、ゆっくりと首を振って答える。
「記憶を持つわたくしという異分子がいるからなのか、中途半端に未来を変えようとしたからなのか。
物語にはなかったはずの縁談話がユーリに来ていたんです」
「え……?」
この話は二人とも知らなかったのか、驚きに目を見張っている。
「だから、わたくしは何がなんでもユーリを大公閣下の元へ行かせる必要があったのです。
その為なら、足の一本くらいどうなっても構いませんでした」
本当は、あの時死んでも構わないとも思っていたけど、さすがにそれはユーリの前では言えない。
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