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4
あたしは結局ユーリと大公閣下に連れられ、大公領で暮らすことになった。
そうして、あっという間に季節は巡り、一年が過ぎた。
先月、ユーリと大公閣下は遂に式を挙げ、夫婦となった。
花嫁衣装に身を包んだユーリは本当に美しくかった。
両親が断罪され、二人に全てを話したあの日。
あたしは結局体調を崩し、それから数日寝込むことになってしまった。
何とか大公領まで来れるまでには一時的には回復したけど、大公領へ来てからも体調が良くなることはなく、この一年のほとんどをベッドの上で過ごしている。
ベッドに上体だけを起こした体勢で座り、窓の外の景色を眺めるのが最近の一日の過ごし方だ。
ユーリや大公閣下も忙しい合間を縫っては顔を出してくれているけど、基本的にはこうして一人で過ごしていることが多い。
もう貴族籍は剥奪され、平民になったにも関わらず、大公妃となったユーリの異母姉ということで大公家の使用人達もあたしに良くしてくれるし、部屋は日当たりの良い角部屋をわざわざ用意してくれた。
思えば、エミリアとしての記憶が戻ってから、こんなに穏やかな日々を過ごしたことはなかった。
出来ることなら、少しでも元気になって、ここにいる優しい人達の為に何かがしたい。
でも、あたしにはもうそれほど時間が残されてはいないこともわかっていた。
ずっと張り詰めていたものが切れて、気が抜けたからかもしれない。
あるいは、もうこの世界でのあたしの役目が終わったから退場するようにという何者かの意思なのかもしれない。
もうずっと長いこと、自分には処刑されて生涯を終える未来しか残されていないと思って生きてきた。
それなのに、人生で最期のほんの少しの時間だけとは言え、こんなに穏やかな気持ちで過ごせている。
大切な妹であるユーリだって、毎日忙しそうではあるけど、本当に幸せそうだ。
それなら、もう良いのかな。
何も思い残すことはないと言ったら嘘になるけど、ユーリの花嫁姿も見られたし。
「次はお義姉様の番ですからね!
早く元気になりましょう!」
そう言ってくれたユーリの希望は叶えてあげられそうにないかな。
ごめんねユーリ。
最期までダメなお姉ちゃんで。
でも、あたしね。ユーリのお姉ちゃんで本当に良かった。
大変だったけど、きっと悪くない人生だった。
そう思うよ。
大公領へ来てから一年と一ヶ月が過ぎ、庭の木々に新緑が芽吹く頃。
ユーリと大公閣下に見守られながら、あたしは静かに息を引き取った。
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