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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
子爵家から義姉に逃がされ、大公家へと来てからあっという間に二年が過ぎた。
あの日、義姉に言われるままアンナと共に大公の元へと向かっていた私は、途中で大公家の使者と出会うことが出来た。
まさか大公家から我が家へ縁談を申し込むために向かっているとは思ってもいなかったからびっくりしたけど。
そこで子爵家から逃げ出した理由を全て話し、使者と共に大公家へと訪れた私達を、大公様は戸惑いながらも快く受け入れてくださった。
また、私達が大公家から逃げ出したことは、突然子爵家に押し入った強盗に連れ去られたということになっているらしい。
それを、我が家へと向かう途中の大公家の使者の一行に助けられたということになっていた。
一見すると冷たそうに見えながらも、本当はとても優しい大公様に私が心奪われてしまうまで、それほど時間はかからなかった。
大公様も私を受け入れてくださり、今夜、王城での舞踏会で王家の皆様へ婚約の報告をすることまで出来た。
この二年、本当に色んなことがあったなぁと思い出している私の前で、今かつての家族が断罪されている。
私は全然知らなかったのだけど、父と継母は、どうやら自分達も大公家の身内となったと勝手に思い込み、その名を利用までして相当好き勝手にやっていたらしい。
王家に連なる大公様の名前を勝手に利用し、犯罪にまで手を染めた罪は重い。
今、まさに国王陛下から告げられた国家反逆罪という言葉に、父と継母が半狂乱になって無罪を訴えている。
国家反逆罪となれば、その末路はもう決まっている。
父と継母が太陽の下を生きて歩くことは、もう二度とないのだろう。
一応は両親である人と今生の別れとなるのだろうけど、私は不思議と何も感じていなかった。
普通なら、もっと悲しかったりするものなのだろうけど。
この二人には、肉親の情というものを感じたことがないからなのかな。
そう言えば、両親から疎まれる原因となっていた私の黒髪と深紅の瞳は、大公家や今日挨拶させて頂いた他の貴族の方々には普通に受け入れられた。
どうやら、他国には普通にいる色合いらしい。
大公様はいつもとても綺麗だと言ってくださるし、他の貴族の方々も、珍しくて神秘的な色だと褒めてくれた。
私にはそのことがとても嬉しかったし、同時にそれが理由で私を虐げていた両親への気持ちが完全に冷めてしまったのも、この場でなにも感じない理由なのかもしれない。
「フェーネフ子爵令嬢エミリア。前へ。」
過去を思い出していた私の意識は、大公様の声で現実へと引き戻される。
「お義姉様……」
両親が断罪されているのを何も言わずに静かに見ていた義姉が、近衛兵に両脇を抱えられながらゆっくりと私達の前に歩み出る。
二年ぶりに見る義姉は、右足を引き摺るように歩いていた。
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