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喧騒
午前12時、朝食も食べていなかった碧は空腹で近くにあったファーストフード店に来ていた。部活帰りであろう学生、親子連れなどで賑わっていた。注文をするために列へ並ぶとふと奥の席に見た事のある顔ぶれがあった。同じクラスの西田大介とそれ以外がいた。見つからないように顔を背け自分の番が来るのをただただ待った。ついに自分の番になり注文をしそれを受け取るとなるべく遠くの席へ陣をとる。一息つく間もなく「来栖」と名前を呼ばれる。見上げるとそこにはさっきまで席に座っていた西田とそれ以外達が碧を見下すようにたっていた。その目に不愉快さを覚えながら返事をする。
「なに?」
「いや、珍しいなって思って声掛けただけ」
「そう」
あまりにも素っ気ない碧の態度にそれ以外達は顔を歪めていた。そんなことも気にせず西田は碧に話しかける。
「俺たちこれからゲーセン行くんだけどお前も来る?」
思わぬ誘いに驚くが
「いい、他に行くところあるから」
行くあてなんてどこにもないのに。心の中の自分が毒を吐く。体にじわっと広がる熱を気にしないフリをして西田から目をそらす。
「わかった。気が向いたら俺たち西口のゲーセンにいるから来いよ」
それだけを言い残し西田達は店を出ていった。少しだけ冷めたハンバーガーを頬張る。味なんてしなかった。周りの声が大きくなる。耳を塞ぎたくなる衝動に駆られる。食べかけのハンバーガーとポテトを無理やり口に入れ、逃げるように店から出る。時刻は13時を回っていた。雲ひとつも無い空の下、照り付ける太陽を睨みながら碧は歩き出した。
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