慟哭

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慟哭

夏が本格化した、8月中旬。午後2時。 照りつける太陽の光が汗を滲ませる。いつもと変わらない二人の世界。珍しく公園には賑やかな子供の声で溢れていた。それを眺めながらとりとめのない話をしていた。1人の子供がボールを追いかける。そのボールが茜の足元に来る。拾い上げ手渡しする。にこりと笑って 「お姉さんも混ざっちゃおっかな〜!」 なんて子供より子供っぽい声で茜が混ざりに行く。それを見つめていた。 「碧も遊ぼ!」 手招きする。首を横に振り 「私はここにいるよ」 茜と子供達を見守っていた。子供達の親は話が盛り上がっているようだった。徐々に目線は子供から離れていた。 ボールを遠くへ飛ばされる。それを追いかける子供は一直線にボールだけを見つめていた。茜が慌てて追いかける。手を伸ばしかけたその瞬間、車の泣き叫ぶ音がした。鈍い音が響く。 「__茜?」 呼びかけても反応は無い。子供の号哭だけが音を支配していた。頭が痛い。 「起きてよ」 肩を揺さぶる。首がすわらず頭だけが揺れる。 「嫌、やめてよ。起きて」 いつもみたいに笑って。碧って呼んで。茜の体に縋り付く。遠くの方から救急車の音が聞こえた。大人達に引き剥がされるのを必死に抵抗する。胸が苦しい。喉が開かない。碧の意識は暗闇に包まれた。心が壊れる音がした。 夢を見る。2人が笑い合いながら寝転ぶ。繋がれた手は決して離れることのなく力強く、まるで絡まった糸のように解くことの出来ないようで。幸せな日々を映し出す。けして忘れないように消えないように。花束を大事に抱えるように胸の奥の奥に追いやって閉じ込めた。 すくい上げた水が指の隙間からこぼれていくように放課後2人で行ったファーストフード店の喧騒も、公園で話した恋の話も夢も。伝えたかった言葉も思いさえも、消えていく。最初から有り得なかったことのようにいつもの変わらない日常を繰り返す。
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