逃避

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逃避

まとわりつく汗の不快感で目が覚める。クーラーの冷房はいつの間にか消えていた。午前6時。外はもう明るくカーテンから朝の優しい日差しが部屋の中に入り込んでいた。クーラーを付けまた寝ようにも1度日差しを見てしまったせいで眠気はどこかへ行ってしまったようだ。仕方がなく碧は重い体を起こした。深いため息をつく。散乱したベットの上で瞼を擦る。やっとの思いで立ち上がろうとした時、碧の視界は暗くなる。 (またか……)平衡感覚も無くなり近くの壁にもたれかかる。じっと目をつぶって視界の暗さが無くなるのを待つ。徐々に体の力が戻ってくる。そっと目を開けるとそこはただ普通のいつもの部屋。 重い足取りで洗面所へ向かい朝の支度をする。キッチンを覗くと変わらない綺麗なテーブルが見えた。冷蔵庫を開けるが食欲を誘うようなものはなかった。仕方がなく部屋に戻り服に腕を通す。気だるさからかベットに倒れ込む。せっかくの綺麗な洋服が乱れることなんか気にせずに目をつぶった。 7月の下旬から夏休みに入り碧の日常は変わった。毎朝7時に起き朝食を食べ学校へ向かう。授業を受け、昼休みは売店のパンを食べる。陸上部が走り込みをしている校庭を横目に下校する。繰り返されていた日常は夏休みという怠惰に過ごすだけの日常にうつり変わった。 目を開け時計を見ると10時になっていた。倒れ込んだままどうやら眠っていたようだ。少しだけシワになった服を整え、リュックサックを取りだし出かける準備をする。玄関へ向かう先、キッチンを横目に見るが相も変わらず朝のままであった。玄関のドアを開けるとジリジリと太陽が外を照らしていた。碧を拒むかのような暑さに振り返るが、他人事のようにドアは音を立て閉まる。 意をけして1歩足を進める。午前11時。碧ただ1人、日常から逃げ出した。
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