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スペシャルクリームソーダ
「あっ、クリームソーダが出来たようね。それじゃ頑張ってね」
奥さんは、人差し指を口にあて、彼が厨房から出て来るのに合わせて彼女から離れて行った。
それとすれ違いに、パフェ用の器で特大のクリームソーダを持って彼がやってくる。いつもの2倍はあるクリームソーダは、フルーツも乗っていてパフェのよにも見える。
「うわ~っ凄っ、でも、え~と、これは、普通のクリームソーダじゃ…」
「え~と、そ、そう、タイムサービス、そうタイムサービス…かな」
「タイムサービス?」
「そう、これは俺のお得意様にだけのタイムサービスだから。だから、安心して食べて。ちゃんとシュワってするから。
ああ、その代わりと言ったらなんだけど、これからも御贔屓にして欲しいんだけど…いいかなぁ」
「あっ、はい、もちろん!出来るだけ来ます。バイトして、節約して出来るだけ御贔屓にします」
「よかった、でも、無理はし過ぎないように」
「了解です」
二人は、出会った春の頃の様に他人行儀に頭を下げ合った。そして、笑った。
外は相変わらず猛暑だけど、この二人と一緒にオーナー夫妻も春の爽やかな空気に包まれるのを感じていた。
「おい、今日は寿司でも食べに行こうか」
「そうね、回らないのをね…お祝いに!」
<おしまい>
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