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「オーナー、今日も俺が作っても良いですか?多分、不足分を払うことになると思いますけど」
「任せるよ。あと、不足分は店からのお祝いだよ」
「お祝い?お祝いって、何のお祝いですか?」
「ん~、なんとなくだよ」
彼はカウンターの奥の厨房に入り、クリームソーダを作り出す。
その間、オーナーの奥さんが彼女に近寄り、最近ご無沙汰だった理由を彼に内緒で聞いてみた。すると、日中は炎天下の下で公園清掃のバイトをしていたとのことであった。
「この猛暑の中、公園の清掃を?」
「短期のバイトで、めぼしいのがそれしか見つからなくて」
「そうだったのね」
「あの~すみませんでした。メニューにないものを無理やり頼んでしまって。
実家に帰るお金が足りなくなりそうでそんなことしちゃったんですけど、後で考えると、多分、私、彼に我がままを言って見たかったんだと思います。
それがお店の迷惑だってことが見えなくなってしまって。彼のお店じゃないのに…」
「フフフ、そうね。でも、気付いてちゃんとバイトして稼いで来たんだから。えらい、えらい。
人を好きになっちゃうと、そんなこともあるものよ。でも、いくら好きになってもそこまでしちゃうのは少数派かもは知れないけど」
「すみません。いや、でも、その好きだと言うのは…、彼は大学の数少ない大事な友達なだけで…
ホントは、もっと早くバイトをやるべきでした。みんなやってることなのに」
「でも、ほらっ。バイトをすると自由に会えなくなるから出来なかったんでしょ。それに、うちは女性のお客さんも多いから心配だものね」
「いや、そんな、そんなんじゃないです、ホント」
オーナの奥さんの鋭い突込みに顔が真っ赤になる彼女。それを見て更に鋭く突っ込んでしまうのは熟女の性。
「だけど明日一緒に実家に帰るつもりなんでしょ」
「あっ、いや、まだそんな約束はしてないので、きっと別々にだと…」
「さっき、御飯に誘ったように、おもいきって”一緒に帰ろう”って言うのよ。絶対大丈夫だから。保証するわよ!」
「はあ、そうですかぁ」
そこで、彼が厨房からカウンターに出て来た。
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