(一)

2/4
前へ
/32ページ
次へ
 普通ならそこでカウンターに落ちて終わりになるところなのだが、このときは違った。グラスは比較的カウンターの(ふち)近くに置かれており、飛んで行ったチャーシューはカウンターを通り過ぎて床へと落ちていった。  北郷はそれに気づかずに店を出ようとした。 「おい」  左の席のチャーシューを食べ損ねた男が、低い声で北郷を呼び止めた。  北郷はその声を聞いたものの、自分へのではないと判断して店のドアを開けて外へ踏み出した。  その時、北郷は後ろから肩を掴まれた。ちょうど店の外へ体が全部出たところだった。 (続く)
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

729人が本棚に入れています
本棚に追加