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「おい、待てって言ってるだろ」
さっきは左にいた男が低い怒気をこめた声で言った。
「何だよ」
北郷は即座に全身に緊張を入れた。
相手が一体何に怒っているのか、北郷にはわからなかったが、経験上、舐められないためには対抗しなくてはならない。だから北郷は相手と同じく怒気を込めた低い声で短く返事をしながら相手の方に向き直り、眉間に皺を寄せて睨みつけてやった。
すると男が北郷のシャツの襟元を掴んできた。
「なんじゃその態度は。謝らんかい」
(続く)
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