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(一)
きっかけは、些細なことだった。
ラーメン屋でラーメンを食い終わり、席を立った時に、左隣の男の右手に北郷の体が少し触れたのだ。北郷自身はそれに気づかなかった。
男が箸でつまんでいた薄いチャーシューが、北郷の体に触れた衝撃で箸からはずれて飛んでいった。チャーシューは勢いよく丼の上空を通過してラーメン屋のカウンターに着地するかに見えたが、左隣の男が左側に置いてあったお冷のグラスに当たり、跳ね返った。
(続く)
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