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長谷部が何とも言えない声を出した。私は再度耳を受話器に傾ける。 「…あ、どうかしたか?」 『…いや、その』 どうにも長谷部の口調の歯切れが悪い。  私が話しかける受話器の向こうで、長谷部聡ーーーこと長谷部は、仕事場の皮膚科クリニックである診察室のデスクに置いて開いた医学雑誌を、さして真面目に読むでもなく、パラパラとめくっていく。
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