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 雑誌には『人工培養による皮膚組織、本格的に実用化。重度の熱傷、難病治療に期待』などという文章が記載されていたが、やがてバサッと紙面を閉じる。スマホを耳に当てたまま、デスクの脇に置いてある写真立てを手に取った。写真には、まだ幼い女の子の写真が納められている。 「……凛ちゃん、元気かな…って思ってさ」 受話器の向こうにいた颯人こと、私はそんな旧友の様子を、口調から何となく察すると、同じように、何とも言えない声を出した。
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