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 「……奈美!」  手が触れそうで二度と触れない手を空に伸ばして、はぁはぁと荒い息遣いで私は一人ベッドの上で呼吸していた。  現実に戻った先は自室である寝室。  肩で息をするうち、夢か、とベッド傍の棚の上に置かれた時計を手に取った。  秒針は朝5時を指し示していた。  時計の横に置かれた写真立てに、8年前亡くなった、奈美の姿がある。  いつも変わることなく笑顔のまま静止している彼女の姿を見ると、おはよう、と呟くように声をかけた。
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