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つまらない男
つまらない人生だった。
何をするにも人よりも上手に出来なかった。
出来ないのに最低限のことは出来るのだから普通の人と同じ舞台に立たなくてはならず、俺は常に、人間社会では下位にいた。
分かっている。
不幸な人生ではない。
親は俺を愛してくれていたし彼女は出来なくても友達はいた。
ただただ上手にできなかったの一言に尽きる。
ネットで調べて作った時限式の小型爆弾を部屋の奥にセットする。
この古いアパートに人はそんなにいない。
両隣に人は住んでないし、この周りは上に女性が住んでいるだけだ。
でも、この時間なら家にいないことの方が多い。
そして自分の足を縄でくくり、手を縄でくくり動けないようにした。
こうでもしないときっと直前になって自分は逃げ出してしまう。
そんな大事な決断ですら逃げ出してしまうであろう自分の軟弱な意思に嘲笑う。
でも今日がちょうどよかった。1月16日の日が沈むころ。
俺が産まれたその時間に俺はこの世から消える。
疲れてしまった。
何か決定的なことがあったわけではない。でも疲れてしまった。
うまくできないのにうまくできるやつと一緒に生活するのが。
それなのに物語のような劇的なことが起こらなくて毎日毎日同じ生活が繰り返されるのに。
そう。だから、天国へ行こう。
その時、玄関からチャイムが鳴り、女性の声が聞こえた。
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