そうだ京都へいこう

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 わたしは、京都へいこうと思い立ったのは、夏の暑いさかりであった。河原町に来るともう12時だった。たしか、舞妓さんひとくち弁当があったはずだ。わたしが舞妓さんのひとくち弁当の写真をみたのは、もうずいぶんと前である。独身時代に、京都へ遊びにいったりしていて、その頃は先斗町にその店はあった。  一度くらいは味わってみたい。そう考え、グーグルマップで検索してみるともうロケーションは変わっていた。今は便利な時代である。場所までの経路が地図でつくられそれにそって歩くと店にいくことができた。店は、角にある二階建てで、若い女性がでてきて二階に案内してくださった。厨房にも若い男性の姿があった。ああ、もうずいぶんと、時間が経ったのだ。その舞妓さん弁当を宣伝していた白い割烹着を着た方のお孫さん世代のような気持ちがした。席に案内されて座ると、そこは誰かの家のリビングのようであって、京都とはおもわれないモダンな空間が演出されていた。  こういう感じもいいな。  わたしは京都の通信制の大学で、建築の勉強をした日々のことを思い返していた。こういう、部屋の中に入ったらまったく違う空間みたいなものもいいなと感じた。  メニューをみた。舞妓さん弁当よりも、もっと美味しそうなもの、ターンシチューがあったので、そちらを注文し、舞妓さん弁当にいつもはいっていたエビフライを追加で注文した。  もう、あれからずいぶんと時間が経ったのだ。あの板前さんの時代に、先斗町のお店に、わたしは、なぜ、若い頃、いこうとしなかったのだろうか?なぜだろうかな。なぜだったんだろう。いつもそのガイドブックに載っていた舞妓さん弁当は、舞妓さんのおちょぼ口にあうように一口サイズになってありますとあって、そうだ、たぶん、高いような気持ちがしたんだな、と想った。一回、いっておけば、きっとあの板前さんが、優しい瞳で迎えてくださったのになあ、と想った。
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