光の道

10/12
前へ
/12ページ
次へ
 後悔に押し潰されそうになったそのとき、心の中に直接聞こえる不思議な声がした。 『光の道を渡りきった者よ。一つだけ願いを言うがよい』  周りを見ても、誰もいない。それが人を超えた存在なのがすぐわかった。  冥界で聞いた声を思い出す。光の道を振り返らずに渡り切れば、願いが叶うようなことを言っていた。 「どんな願いでも叶うんですか? 死者を蘇らせることも」 『もちろんだ』  天の声がなぜ生き返る機会を与えてくれたのかはわからない。でも、私がここまで歩いてきた目的は、ただひとつ。 「では、ここに座る彼女を美しい姿で現世に蘇らせて下さい」  ふっと天から光が降り注ぎ、椅子に座る彼女の体を包みこんだ。その体を蝕んでいた痣が消え、ゆっくりと目が開かれる。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加