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「……どうして」
彼女が驚いた顔で私を見つめる。
「あなたを蘇らせてもらいました。もう一度、やり直してみて下さい。その身体には私の願いがこもっているんですから、嫌とは言わせませんよ」
「……本当に勝手な人」
彼女の瞳から涙がこぼれてくる。希望を捨てずに進めば、道は拓かれるもの。私はこの上ない満足感を覚えていた。
「それでは、お元気で」
「……待って」
再び冥界に帰ろうとしたとき、彼女が私を呼び止めた。
「私も振り返らずにあの道を渡り切ったんですよ」
「え?」
彼女は椅子から立ち上がると、天を仰いだ。
「やはり、私の願いを言います。ここにいる方を現世に蘇らせていただけませんか」
彼女が言うと、先程見たものと同じ光が私に降り注いだ。
体に温かな生命が駆け巡っていくのを感じる。私にも肉体が戻ったのだ。
私が呆然としていると、彼女は首を傾げるようにして笑った。
「嫌とは言わせませんよ」
彼女は眩しいくらいに輝いて見えた。これが彼女の本当の笑顔なのだ。
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