光の道

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 光はゆっくりと暗い大地に降り注ぎ、一筋の道を成した。  生前、聞いたことがあった。  亡くした恋人を蘇らせるため、冥府の王に請い、現世に連れ帰ろうとする若者の話だ。  冥王は蘇りの条件として、行く道で決して振り返ってはならないことを告げる。しかし焦る若者は、出口直前で日の光を見て安心し、振り返ってしまうのだ。その結果、恋人は冥府へ連れ戻され、二人は二度と会うことは叶わなかった。  事前に理解を深めていれば、対処はたやすい事だ。示された道を、何があっても振り返ることなく突き進めばいいのだから。  元々死んでいる身だ。今さら失敗したからといって、失う物などない。ただ、永遠の無の世界へ帰るのみだ。  私はこの世界に堕とされたとき、あらゆる欲望や希望を捨てていた。少なくとも、それが無の世界の理だと思っていた。  だが、不意に現れた光が、私の凍り付いた心に灯をともした。  再び光ある世界に戻れるというのなら、人生をやり直したい。許されるのなら、家族にももう一度会いたい。  その道は、天から差し伸べられた、希望の光。この先に、光あふれる大地が広がっていることを予感させる。  わたしは意を決して、その道に足を踏み入れた。この先、何があろうと決して振り返らない。それだけを念じながら。
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