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どのくらい呆然としていたのかわからない。そのままじっとしていても、苦しみが増すだけ。私は前に進むことにした。そうすれば、希望が見えてくると信じて。
彼女と出会ったところからさらに長い道程を経て、ついに道の終点にたどり着いた。
見上げるほどの巨大な石門。ここをくぐれば、現世に戻れるのだろうか。
胸の中に去来する彼女への思いを抱えたまま門をくぐると、そこは真っ白な空間に繋がっていた。少し先に、誰かが背を向けて椅子に座っている。
近づくにつれ、胸が高鳴っていく。その長いブロンドの髪には見覚えがある。後姿は初めて見るが、彼女だとすぐにわかった。
彼女は現世から来たのだという。彼女の体がここにあっても不思議ではない。
私はそっと座っている人物の前に回り込んだ。
その姿を見た瞬間、言葉を失ってしまった。
確かに彼女に違いなかった。しかし、顔と腕、足にかけて、右半身の殆どを赤いケロイド状の腫れが覆い尽くしている。目を背けずにはいられなかった。正直なところ、ここまで酷いとは想像していなかった。きっと、彼女は想像を絶するほど苦しんできたのだろう。どんな言葉をかければよかったのか、改めて考えてみるが、答えなど出ない。心の傷の深さは本人にしかわからないのだから。
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