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いざ、いいことを説明しようとすると、しどろもどろになった。いいことを実際にすれば褒められるのだろうけど、まだそれを探している段階だから、説明するのが難しかった。
「いいことって、何のためにするんだ?」
若い警官も尋ねてくる。
「いや、いいことして、天国に行きたくて」
「天国?」
警官二人は顔を見合わせて怪訝な表情を浮かべていた。
「とりあえず、そのリュックの中身見せてくれる?」
年配の警官に言われ、俺は黙ってそれに従った。
「この小さい袋には何が入ってるの?」
「えっ、薬です」
そう答えると、若い警官が俺の右腕を強く掴んだ。年配の警官がそれを制しながら俺に尋ねた。
「何の薬?」
「えっ、えっと、頭痛とか、腹痛とか。いや、いいことしようと思って。その、頭痛とかで困ってる人がいたら、あげようと」
「ふーん」と、まるで信じてないような口調で年配の警官は答えた。
「あとはタオルとか、水筒とか」と、警官に中身を見せながら、リュックの底にあるものを見て俺は固まってしまった。
「どうした?」
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