1人が本棚に入れています
本棚に追加
若い警官が中身を見せるのをためらった俺に詰め寄ってきた。
「あと、これ」
俺は渋々、リュックの中からトンカチを取り出した。これは、女の人が悪い男に絡まれていた時の為に入れていたものだった。
すぐに年輩の警官が厳しい顔で無線で何か連絡を取った。そして、警官二人は両サイドに立ち、俺が逃げられないようにすると、「警察署まで来てもらえますか」と、拒否出来ない口調で言った。どう考えても逆らえそうにない状況だったので、俺は素直にそれに従った。
警察署に着くなり、すぐに尿検査をされた。任意だと言いながら、絶対に断れない雰囲気だった。その後もいろいろ聞かれた。俺は、とりあえず今までひきこもっていて、最近外出するようになったことや、することがないので、いいことを探して散歩していることを素直に話した。でも、聞いている警官は皆、俺の言っていることが理解出来ないようだった。しばらく警察署の一室で、重苦しい雰囲気を味わっていた。それを壊したのは慌ただしく部屋に入ってきた母ちゃんだった。
「何やったの、孝史? お母さん仕事中なのに、なんなの。警察から連絡なんて、みんなに何があったのって、大変だったんだから!」
最初のコメントを投稿しよう!