そうだ、天国へ行こう

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 せっかくいいことをするって目標が出来たけど、そのせいで捕まるなら意味ないなと、俺はまた人生を見失っていた。それからも散歩は続けたけど、いいことをしようとするのはやめた。俺は当分天国に行けそうになかった。  人生とはわからないもので、こうやって行き場を失った俺に朗報が届いた。俺がひきこもりを辞めたのを聞きつけ、いとこの清志兄ちゃんが沖縄で営んでいる宿を手伝わないかと誘ってきた。俺も、ここにいてもすることないし、それに沖縄ならそっちの方が暖かいし南国だし、天国っぽいから行くことにした。父ちゃんと母ちゃんはやっと働く気になってくれたと喜んでくれたけど、別にそういうわけでもなかった。  あれから三年くらい経った。父ちゃんも母ちゃんも年に一回くらいは遊びに来てくれる。仕事は楽と言えば楽だし、大変と言えば大変なそんなものだった。たまに、地元の人に、なんでこの島に来たんだって聞かれるけど、俺は決まってこう答える。 「天国に行きたかったんだ」  地元の人は満足そうに、そうだね、ここは人も温かいし、天国に近いわねと微笑んでくれる。そういうことでもなかったけど、確かにここで暮らしているほうが天国に近いかもって今は満足している。
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