そうだ、天国へ行こう

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「なあ、俺のジーンズとか、なかった?」 「ああ、それなら何年か前に町内会のバザーに出したわ。何かいっぱい服を出してほしいって田所さんに頼まれたのよ」 「なんだよ、勝手なことするなよ」  俺は怒ってはみたものの、何年もひきこもり外出なんてしてなかったんだから仕方ないなと諦めた。 「おおっ、孝史、外出るのか」  父ちゃんが少し感心したように言う。 「ああ、今日からいいことするんだよ。外に出ていいことするって決めたんだ」 「はぁ、いいことなぁ?」  父ちゃんはピンときてないみたいだけど、「まあ、がんばれよ」と応援してくれた。 「お昼はどうするの?」  母ちゃんが現実的な問題をぶつけてきたけど、そこまで考えてなかった。 「いや、いいよ。また腹減ったら考える」  それから、俺は何年かぶりに外に出た。もう俺は二十歳らしいから、たぶん四、五年ぶりくらいだ。俺は目的地も決めず、ふらりと歩いたけど、無意識に足は中学校の方に向いていた。高校にはほとんど通ってないし、覚えているといえば、中学くらいしかなかったのかもしれない。
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