そうだ、天国へ行こう

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 体力がついた俺は本格的にいいことを探し始めた。あてもなくいいことを探していたけど、いざいいことをしようとしても、することがなかった。例えば、お年寄りが重いものを持って困っているとか、女の人が悪い男に絡まれているとか、誰かが急病で倒れてるとか、そんな緊急事態は特に起こらなかった。ただ、歩きながら、もしそんなことが起こっても、俺に対応出来るのだろうかと、考えを巡らせていた。  年寄りが重いものを持っているのは、いくら体力のない俺でもぎりぎり大丈夫そうだったけど、寝る前に腕立てくらいはすることにした。女の人が悪い男に絡まれている場合は、俺にはどうしようもなさそうだった。そもそも、ケンカなんかしたことないし、空手を習った経験もない。俺が割って入っても、すぐに殴られて終わりそうだった。それと、誰かが急病で倒れた時は、俺なんか何も役に立たないだろう。俺には医学の知識もないし、下手に関わっても迷惑なだけな気がした。  そうこう考えると、本当にいいことをするのは難しいことだとわかった。それでも、俺でも出来るいいことを探すことにした。まだ、天国は諦めたくなかった。  いいことを見つけられないまま、歩く毎日が続いた。近所の公園をぶらっとしていると、お母さんと子供が何組か遊んでいた。
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