夏色デート

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「あれ、井坂」 「わぁ、偶然! ってか、なにその髪と格好、一瞬佐藤だって気づかなかったよ! かっこいいじゃん!」 中学の同級生だった女子だった。比較的仲が良く、今でも大勢で遊ぶ時は必ずいるメンバーだ。 「この前の海の時もやけにあか抜けたなぁって思ってたけど、そういう格好すると別人みたい」 「悪かったな」 「褒めてんの! 今日は……え? 連れ?」 井坂はようやく慈雨に気づいたらしい。慈雨の顔を見てみるみる真っ赤に染まっていく。 「や、やだ、友達?」 「うん」 「ちょっと、何あのイケメン! 紹介しなさいよ!」 虹輝の腕を引っ張ってこそりと耳打ちする。それに苦笑いしながら首を振った。 「あきらめろ、あいつそういうのすごく嫌がるから」 「えー……イケメンもっと拝みたい……っ」 顔を近づけこそこそと話していた虹輝の腕を慈雨がぐいっと後ろから引っ張る。ぽすりと慈雨の胸元に背を預ける格好になった。 「成宮?」 「虹輝の友達?」 「うん」 見上げればいつものよそ行きの笑みがあった。 「こんばんは、虹輝のクラスメイトの成宮です」 「! 初めまして、佐藤の中学の同級生の井坂です!」 井坂の顔がぱあっと輝く。 慈雨の胡散臭い笑顔を見るのは久しぶりだ。その容貌と人当たりの良さで誰をも虜にしてしまう。本当にどこまでも人たらしな男だとため息が漏れそうなところで今度は腹に衝撃が走った。 「虹輝くん、この人だあれ?」 気づけば杏奈が虹輝に抱き着いていた。 「あ、中学校の時のクラスメイトだよ」 杏奈に抱き着かれるとは思っておらず混乱する。背後に慈雨、正面に杏奈で美形兄妹にサンドされた形だ。 「わぁ、美少女」 井坂も急に現れた杏奈にぽかんとして呟いた。 「杏奈、虹輝が重いだろ、こっちおいで」 慈雨のそんな言葉に杏奈は口を尖らせながらも従うと、慈雨も虹輝を離す。 それにほっとしていれば姿が見えなかった陽太も寄ってきた。井坂がそれに気づく。 「陽太じゃん、久しぶり」 「お、井坂のねーちゃん」 「そっか、相変わらず弟の面倒見てんだ。えらいなぁ」 「そういう井坂は待ち合わせとかじゃないのか?」 「あ、そうそう、行かなきゃ。じゃあ次はお正月かな、グループラインでまた連絡しよ!」 井坂は思い出したように手を振ると走り出した。さっぱりとした女子なので虹輝とも話が合う。 手を振り返せば慈雨も一緒に見送った。
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