君はとくべつ

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「最近どーよ」 「別に変わり映えはしないかな。クラス違うと本当に会わないよな」 同じ理系でもあるのにクラスの位置も離れているため滅多に姿を見ることもなかった。 「まあそれもあるけど最近は完璧王子といつも一緒じゃん?」 その言葉にどきりとする。 新学期が始まって早一か月、確かに慈雨と一緒にいる頻度は格段に上がった気がする。朝もほとんど一緒なので朝の遭遇率が高かった優斗と一緒にならないのは必然なのだろう。 「お前、完璧王子は苦手っぽかったのに」 「いや…その、慈雨は意外と完璧じゃないってわかったから」 「お、ほんとに名前で呼んでる」 「え?」 「王子、名前で呼ばれるの極端に嫌がるって聞いてたけど、虹輝だけは許されてるって聞いたからさ」 「え……誰に?」 優斗はサンドイッチ片手に立ち上がると店の奥の業務用冷蔵庫からペットボトルを取り出した。一本虹輝に渡しながら答える。 「クラスの女子が噂してた。王子に気に入られたきゃお前と仲良くなるのが最善じゃないか、とかなんとか」 「俺は馬かよ」 「あはは、将を射んと欲すればまず馬を射よってやつな」 受け取ったペットボトルの蓋をとりながら虹輝は溜め息をついた。 「あいつはなんであんなにモテるんだ」 「あの容姿にスタイルに頭の良さ、運動神経、性格良ってなったらモテない方がおかしいだろーよ。ってゆーか、ここ最近、お前も人気だからな」 「は?」 「王子といるんだから必然と目立つだろ。それにマスク生活も終わって髪型とかも変えてはっきり顔が見えるようになってあれ、佐藤くんって実は美少年じゃない?ってなってるんだよ、くそ羨ましい」 「なんだそれ、気のせいだろ、全然モテてる気がしないんだけど」 「言っとくけどそれはお前が鈍感だからだよ。実は中学の頃から結構モテてたからな。お前を好きになる子が控えめな子が多かったせいもあるし、お前、家の手伝いとかで忙しかったし全くその気ないの丸分かりだったから告白されなかっただけで」 全然気づかなかった。いや、ここは話五分くらいで捉えておこうと思う。
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