君はとくべつ

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「っていうことがあって、久しぶりに優斗と遊びに行ってこようかなって思ってるんだ」 慈雨の部屋で課題をこなして一息ついた時だった。虹輝は先日優斗と遊びに行こうと話したことを慈雨に報告した。 家政婦の中村が作ったフィナンシェを口に入れながら虹輝は慈雨を見る。今日の菓子も絶品、バターのコクがいい。少しばかり焦がしているようで、それが絶妙に効いていて口の中でじゅわりと蕩けるようだ。 相変わらずおいしい、と虹輝が顔を弛ませると慈雨もそれを手に取った。 「どこ行くの?」 「んー適当かな、買い物行ってカラオケとか?」 いつも優斗と遊ぶ時はそのような感じなのでそう伝えれば慈雨はそう、楽しんできてねとあっさりと頷いた。 「……」 「何?」 思わず慈雨を見つめれば慈雨が首を傾げる。 「いや……お前のことだから反対するかなって思った」 付き合うようになってからここ一月半、意外とヤキモチ焼きであることを知ったのでわざわざ報告したのだが、とフィナンシェをもう一つ取り上げながら言えば慈雨は笑った。 「松前くんだったよね、幼馴染でずっと仲いいんだろ? 虹輝に対して下心がなければ口出さないよ」 そんなに心が狭い束縛しそうな男に見えるの、と呟く慈雨に思わず笑う。 「そうだよな、ごめん、三浦と話してたりすると必ず後でどんなこと話したのかってしつこく聞くからちょっと誤解してた、ごめん」 虹輝は潔く謝る。 「いや三浦さんは……まあ気づいてないならいいんだけど……っていうか、俺はちゃんと虹輝に愛されてる自信あるから浮気しないなら何してもいいよ?」 悪戯っぽく笑って虹輝を引き寄せる。 「……ん」 チュッと音を立ててキスをし、また唇が触れそうな距離で見つめられる。 「俺のこと、好きでしょ?」 「……うん」 素直に頷けば嬉しそうに慈雨が笑って更に唇を重ねた。 端から見ればこのバカップルがと言われそうなことも付き合い始めたばかりのふたりでは気づかない。のちにあの辺りはもう黒歴史だと思い出したくない虹輝がいるのは数年後のことだろう。 ぐっと身体を抱き寄せられ、深くなるキスに虹輝もその背に腕を回す。 最初は戸惑っていたキスも二人きりになるたびにするようになってすっかり慣れてしまった。 「ん、っ……ふ、」 舌を絡められながらそろりと慈雨の指が虹輝の身体に触れる。 「っ、ぁ……」 ニットベストの下に入り込んだ掌が虹輝の胸のあたりを探り、わずかな引っ掛かりを弾く。じんと甘やかな痺れが走り虹輝は小さく呻いた。すりすりと撫でられ、ぞくぞくしたものがせり上がる。自分自身では気づかないが、ささやかなそこはいつの間にか芯を持ち立ち上がっていた。 ここ最近、キスをする度に少しずつ身体のどこかを触られるようになった。 最初は何も感じなかったのに、とぼんやりする頭でキスを受け止めながら考える。 その間にもネクタイを緩められ、第二ボタンまで開かれたそこに慈雨の唇が降りた。じゅっと音を立て、うっすらと跡がつくくらいに吸い上げられる。
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