528人が本棚に入れています
本棚に追加
春の嵐
その少年と出会ったのは例年よりもずっと桜が咲くのが早い春のことだった。
春の特徴らしく、三日開けずに雨が降る催花雨の季節。せっかく綺麗に咲いた桜の枝を大きく震わすようにその雨はやってきた。
雨と風に煽られあちこちへと飛ぶ花びらの向こう、歩道橋の上、目を奪われたのはまるで泣いているようだったから。
桜舞い散る中、鈍色の空へ手を伸ばす姿はまるで迷子の子供のようだった。
虹輝はその場所を通る度に目に焼き付いたあのシーンを思い出す。
最初のコメントを投稿しよう!