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学校に着くと、いつもは締め切られているはずの校門が開け放たれていた。
「吉岡さんが開けたの?」
「まあね」
「学級委員長なのに?」
と僕が呆れた調子で言うと、吉岡さんは一瞬目を丸くした。
「ああ、はは、そうそう。凄いでしょ」
校庭の乾いた砂の音だけが、僕たち二人の間に響く。それを聞きながら、どこに行くでもなく、ぼんやり歩いていると、突然身体を冷たい衝撃が襲った。同時に、きゃっきゃと高い笑い声が響いた。
振り返ると、吉岡さんが水道の蛇口を上向きにして、親指で軽く押さえたまま水を出している。
「おい!」思わず声を上げても、彼女はおかしそうに笑うばかりだ。
「楽しいでしょ!」
「何が!」
「青春してるって感じしない!?」
「はあ?」
「私、青春に会いにきたの! あの頃できなかったこと!」
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