恋と呼びたいだけだった。

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恋と呼びたいだけだった。

猛烈に怒るという感情をまさか俺が持つことになるなんて、夢にも思わなかった。 戸崎 奏は今、怒るの最上級の感情をどのように扱えばいいのか、非常に困り果てていた。 猛烈に怒るというのはこう、なんていうか、腹の奥が妙に熱くて心臓がバクバクと痛いほどに脈打つこと、らしい。 そんなこと、辞書にも先生にも教わらなかったのに、実際そうなってみないとわからないというのは、なんともまあ皮肉な話である。 目の前の男は果たしてどうなのか、ふと気になって俯いていた顔を上げて見た。だが、すぐにその衝動を俺は後悔する。 なんとこの男、特徴であるデカすぎる上半身が、見事に丸まっているのだ。しかも、首まで亀のように仕舞い込まれている。 「おい!なんでお前がそんなんなってんだよ!」 罵声が狭い部屋に響き渡る。ついでに荒い吐息とあいつの啜り泣く声も。 「だ、だって、奏が怒ってるから…。」 油井 克巳。この男は何故、どうしてこうなんだ、と付き合ってから何回も何十回も疑問に感じて仕方のないことを懲りもせずにまた思っていた。
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