1人が本棚に入れています
本棚に追加
物語にはハッピーエンドを
「それで? それで? その少年は家に帰った後どうなったの?」
勇太は話の続きが気になるようで、ぐいぐいと俺の方へ寄ってくる。
「まあ、落ち着け!」
俺はそんな勇太に笑いながら、話を続ける。
「少年が家に帰ると、母親に怒られ泣かれ謝られ、弟に泣かれ謝られ抱きつかれ、大騒ぎだった」
「その日は少年が疲れていたこともあり、お風呂に入ってご飯を食べて、そのまま寝たそうだ」
俺は勇太を見つめながら話を続ける。
「次の日は休日だったこともあり、家族みんなでいろんなこと話し合ったそうだ」
勇太は心配そうな顔をして聞いてきた。
「じゃあ、少年はみんなと仲直りできたの?」
「ああ! もちろん!」
そう言うと、勇太は安心したようにニッコリと笑った。
「よかった~~」
そんな勇太を微笑ましく思いながら、俺は少年の冒険を終わらせる。
「少年が飛び出すきっかけになったパズルも、今度は家族みんなで協力して完成を目指したそうです」
「きっと、その時間はなによりも楽しい時間になったことでしょう。おしまい」
俺はそう物語を締めくくる。
パチパチパチと拍手の音が聞こえる。勇太が楽しそうに拍手をしているのだ。
「でも、そっか。その少年は弟と母親を許したんだね……」
そう言う勇太は、納得がいっていないような、安心したような複雑な表情をしていた。
「うん! 僕、ちょっとお母さん達のところへ行ってくる!」
そう、なにかを決意したように言うと、勇太は俺の返事も聞かずに部屋を飛び出した。
一階にいる母親と弟のもとへ向かったのだろう。
勇太が居なくなった部屋で、俺は壁に飾られた、お城が描かれた大きなパズルを見つめた。
「俺も父さんのように、上手く息子を導けることができたかな?」
下から俺の大事な家族が、俺のことを呼んでいる声が聞こえる。
さあ、家族のもとへ行こう!
最初のコメントを投稿しよう!