流転する世界、その裏側

1/20
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
 その施設は一九九八年五月某日都内某所、周辺地域に住む市民から警察への通報によって存在が知られることとなった。  そして、その通報の内容は「公園のトイレの個室で数時間筋トレをしている男性がいる」というものだった。  この日本には、いや世界にはおよそ九割の人間が認識していない「異常」が無数に存在する。  しかしそれらが大衆の目に触れることはほとんどない。なぜなら、残る「一割」の人間がそれらをひたすらに隠しているからだ。  関係者から「鑑定団」と呼ばれる彼らは異常な存在を収集し保管するだけでなく、自分たちの素性も徹底的に秘匿する。その行為は異常存在の独占に他ならないが、目的は「ここまで保たれてきた世界の均衡を保持し、それを脅かす恐れのあるものを制御する」ことにある。だが組織である以上、その理念の下には様々な思惑があり、内輪での敵対や衝突があることはやむを得ないことだが、その側面の話は今回は割愛させてもらう。  この物語の始まりとなった警察への通報に話題を戻すが、この通報はその内容と現場に急行した警察官の報告から、警察と繋がりがある「コレクター」がこの案件は異常存在に起因する事態だと判断。その対処を組織所属の調査員に引き継がせ、現場の指揮の主導権を奪ったのだった。  この日本にも数多くある超常現象顕現項目、通称「異品」の収容の一部始終がここに綴られてようとしている。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!