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「うーむ……田舎にありがちな閉鎖的ムラ社会のようだ……」
それだけが理由ではないように思うのだが、そんな感じで聞き取り調査はうまくいかないまま、太野は村落を進んでゆく……彼が目指しているのは、村の中心的役割を果たしている氏神の神社である。
その神社の宮司の家は代々村長を務めてきた一族でもあり、古くは村の誕生した頃から名主をしてきた旧家でもある。
その宮司ならば、村の習俗や長寿の者の秘密についていろいろ知ってるのではないかと考えたのである。
「あれが天園神社か……」
だが、緩やかな坂道を登り、高台にある神社が見えてきた時のこと。
「…デヘヘヘヘ……ゲヘヘヘへ……」
「……ん?」
神社の方から、一人の男性が坂道を下りてきた。
歳は20代くらいだろうか? 白い浴衣をだらしなく着崩し、焦点の合わぬ目で宙を見つめると、ヘラヘラ笑って口からはヨダレを垂らしている。
「やあ、こんにちは。もしかして、君は宮司さんとこのお子さんかな?」
太野は軽く手を挙げると、その青年に笑顔で挨拶をする。
「…ウヘヘヘヘ……おらあ、原磯さあ行くだあ……ヒャハハハハ……」
だが、青年は太野に気づいていない様子で、何やら独り言をブツブツ呟くと、相変わらずヘラヘラ笑いながら坂道を下って行ってしまう。
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