タローとジローの終末クッキング

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「やった! 本当にあった! あったよジローさん!」 「うわぁ、本当だ! やったね、タローさん!」  お互いのはしゃぐ声がジャガイモ畑に降り注いでいく。さっきのAIが甲斐甲斐しく世話をしていたのか、室内は明るく、温度も一定に保たれていた。  こうしちゃいられないと、まるで競い合うかのように、ガスマスクを引き剥がす。おれのくしゃくしゃの癖っ毛と、羨ましいぐらいに真っ直ぐなジローさんの艶かな黒髪が空間を彩るように広がっていく。  息苦しさから解放されたジローさんは、まるで子鹿のようなくりくりの瞳を輝かせて、ジャガイモ畑を見つめていた。片側だけのエクボが、喜びをより強調しているように見える。 「すごい! これだけあればカレーも作れるね!」  ぴょんぴょんと跳ねる姿に、おれの笑みも深くなる。  ついこないだようやく見つけた、この区域を司るマザーコンピュータから、地下に隠されたジャガイモ畑が存在するという情報を得て、わざわざやってきた甲斐があった。  全てが氷が閉ざされた今では、生野菜に出会える機会はほとんどない。日々の食事を実りあるものにするため、おれとジローさんは週に一度、こうして近隣の施設に「買い出し」という名の食料調達に来ていた。 「早速、持ってこ。どんどん持ってこ」  二人で協力して、収穫したジャガイモを保存容器に詰めるだけ詰める。近代技術の粋を結集して作られた、マイナス四十度の世界にも耐えられる優れものだ。  これだけあれば、しばらくは持つだろう。帰って何を作ろうかとほくほく顔で話していると、背後で物音がした。
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