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わたしは、彼のTシャツの胸倉を両手でつかみ、ぐいっと引き寄せ、決死の覚悟で彼にキスをした。クールに見える工藤さんだが、意外にキスが好きなのである。
工藤さんは抵抗せずに、わたしにされるがままだった。これが正解でいいのかな。さっき言ったのは「キスしよう」だったということで。
しばらくして、わたしが息をつくと、工藤さんは、わたしをぎゅっと抱きしめて言った。
「珍しく積極的だね。さっき、『キスしよう』なんて言ってないのに」
「え!? 違うの?」
ああ、ばれてしまった。「ごめんね。実はなんて言ったかわからないのに、返事しちゃった。本当はなんて言ったの?」
「『ごはん食べに行こう』って」
なんと、そんなことだったんだ。でも、工藤さん、それで喜んでたんだ。わたしは妙にうれしくなってしまった。
「うん、行こう」
「でも、こっちが先かな」
工藤さんの整った凛々しい顔が再び目の前に迫ってきて、わたしは今度こそ本当に息が止まりそうになりながら、目を閉じた。
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