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《勉強も、人間関係も、何もかもが無意味。そうだ、異世界へ行こう》
そんな、SNSの新しい投稿を見て、濱田桃花の心臓は一瞬凍りついた。
(ちょっと待って、何言っちゃってるの? だって、異世界に行くって、漫画でよくある、死んで異世界に転生するって意味でしょ?)
投稿した山下雪乃のことは高校の頃から知っている。あまり接点のない同級生だったが、たまたま同じ大学に入った。入学から半年と少々、最近の彼女は講義を休みがちだと耳にしていた。
桃花は飲みかけのスムージーを一気にのどに流し込んだ。まだ大学の最寄り駅のカフェにいてよかった。リュックを引っつかんで店を出る。
小さな店の多い道を、桃花は肩まで伸びた髪とだぼっとしたニットのカーディガンを揺らして小走りした。広い道路に出ると、大きな葉っぱの街路樹が黄色から茶色へと秋めいてきていた。
走ること約五分。
ピンポンピンポン!
リズムゲームのようにアパートのチャイムボタンを連打すると、ガチャとドアが開いた。
「濱田さん? どうしたの?」
長い黒髪がフワリとした――顔をのぞかせた山下雪乃が、可愛い二重の目を素早く瞬いた。
「よかった、いた。久し振り山下さん。というか、いきなり開けたら不用心じゃない?」
「不審者っぽかったから、ドア穴で確認した。そしたら濱田さんだったから」
「う……不審者ぽくてごめん」
「とりあえず、玄関入って」
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