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「何言ってんだお前。ついに頭がおかしくなったか?」
「はは、優太こそ何言ってんの。僕は至ってまともだよ」
「ああそうか、お前の頭がおかしいのは今に始まったことじゃなかったな」
いきなり銀行強盗しようだなんて、とてもまともな人間が言うことではない。
――そう皐月の発言を笑い飛ばす俺だが、さっきから冷や汗が止まらない。
「実はもう準備できてるんだよね。はい、コレ」
「……は?」
ベッドの下から徐に出てきた不気味な黒い箱。
それを皐月から問答無用に渡され、視線を落とす。
靴が一足入りそうな大きさに、絶妙な重さ。
――さらに冷や汗が酷くなった。額から流れた汗が黒い箱にじわりとシミを作る。
「どうしたの固まっちゃって。早く開けてよ」
「ちょ、待てっ――」
「やっぱり銀行強盗と言えばコレだよね」
ソレを開けたらもう後戻りできない。
それはまるで掛け算九九のように頭にこびりついていた記憶。
俺は昔から皐月の言動から危機を察するのが得意だった。
だが――今はもう時既に遅し。
俺の制止をマルッと無視して皐月が蓋を持ち上げた。
「ちゃんと優太の分も調達したよ――拳銃」
――昔から、皐月は絶対に冗談を言わない。
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