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「そうだ、ソーダを買いに行こう」
しょうもないギャグなのは、百も承知だった。
自分で声にだして、恥ずかしくなるくらいに。
なに言ってんだろう、ぼくは。
全身がみるみる熱くなっていく。
ここから駆けだしたい。逃げだしたい。
ああ、死にたい。頭が真っ白になる。
しゅわしゅわ~って、泡になって消えたい。
秋虫が静寂にメロディを奏でる。
放課後の帰り道。
たまたま一緒になったキミと話したくて。
でも、会話の糸口がつかめなかった。
肩を並べて、必死に言葉を探す。
粋な話題を振りたかっただけなのに。
ただ、沈黙が苦しかったのだ。
気まずかった。
なにか言わねば。なにか言わねば。
気持ちが焦った。
刹那、足りない頭脳で閃いたギャグをぶっ飛ばし、後悔する。
もう、キミの顔を直視できない。
その横顔も。
終わった。ぼくの恋は。泡沫となって。片想いのまま。
数秒が数刻に感じられた。
「急にどうしたの」
炭酸が弾けるみたいに、プシュッ、と笑うキミ。
砕けた表情が、ぼくの心をわしづかみにして放さない。
「だったら……。そうだ、今からファミレスへ行こうよ。ソーダもあるし」
キミが指さす先。
明かりの灯りだしたファミレスの看板が、希望の星と言わんばかりに夕闇に瞬いた。
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