光 彩

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「爽、今日の周知見た?」 「えっ?あぁ、◯◯リゾートのイベント?」 俺の部屋で料理を作っている爽を後ろからフワリと腕に包んで聞いた。 「うん。」 「1泊するイベントって珍しいよね。」 「そうだな、社員旅行とは別だし泊まりは初めてだよな。」 「柊也は参加するの?」 「営業部の若手はほぼ強制参加。」 「そうなの!?」 「うん。だから爽も行こ?」 〝営業部の独身20代は強制だからな〜。〟 先輩がホントかウソわからない事を言ってた。 強制参加じゃなくても普通に参加するけど。 青山と二人で新しいウェアとボードを買おうと話していて、丁度帰りが一緒になった水野も加わり盛り上がり 「爽も行けるかな。」と水野が呟いていた。 「日程がね⋯ 」 「バレンタインイベントって書いてたよな。爽、泊まる予定だったじゃん。」 開催日が2/14、15の土日で14日の夜は爽はうちに泊まる予定だった。 「うん、でもその日は日中はお祖母ちゃんの用事があるから⋯ 」 「あっ!あ~、そうだったな。」 14日の日中は祖父母の用事で爽が隣の市まで車で送迎すると約束をしている。 夕方早めに帰って来てバレンタインのディナーに行ってから、俺のアパートで爽のチョコレートケーキを食べようって話していた。 元々、泊まる予定だったから一緒に行けると思った俺は祖父母のことをすっかり忘れていた。 「お祖母ちゃん、久々のお出掛けですごく楽しみにしてるしお祖母ちゃんの体調を考えると、寒いし遠いし電車とかタクシーも無理かな。」 そうだよな⋯ いつも爽が連れて行ってあげてる所で、ずっと行けてなかったからお祖母ちゃんも楽しみにしてるって言ってたもんな。 「あぁ~、どうしても無理か⋯ 」 ⋯⋯⋯⋯。 「うん、そうだね。ごめんね?」 肩を落とす俺に 「柊也は楽しんで来て?」 え、そしたら爽が楽しみにしていたディナーも数少ない泊まりでの二人の時間も無くなる。 爽がその日、一人になるだろ。 「その代わり次の週にあのお店に行こうね?チョコレートケーキも1週間ズレるけど作るからね?」 ニッコリ笑ってそう言ってくれた爽を置いて⋯ 俺は2月14日の朝早く リゾート地へと向かうバスに乗り込んだーー。
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