春疾風

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春疾風

〝ドンッ〟 〝ありがとうございました。〟 〝あぁ、じゃあな〟 〝バンッ〟 小さく聞こえてきた車の音と声にそっと窓に近づき外を見る。 車が走り去るとボードと、ウェアが入った大きなバッグや紙袋を持った柊也がこっちを見上げて笑った。 私は部屋を出て柊也の元へ降りて行き 「おかえりなさいっ。」 と帰って来たのが嬉しくてニッコリと笑う。 「ただいま〜 爽。はい、お土産。」 「えっ?ありがとう。」 と言い紙袋を受け取った。 柊也の部屋の鍵は付き合って一年が経った私の誕生日に渡されていたけど勝手には入らない。 必ず行くときは柊也の了解を得る。というか殆どは柊也から部屋で待っててと言われる。 今日も部屋に居てと言われて、帰りは夕方の予定だったからご飯を作って待っていた。 最初は私が解散場所まで車で迎えに行こうかと話していたんだけど、会社の先輩が行き帰り乗せてくれるというから部屋で待つことに。 「はあぁ〜、疲れた~。筋肉痛だよ。」 「ふふっ、大丈夫?」 「大丈夫っ。爽〜、今度一緒に行こ?すっげぇ、良かったんだよ。」 「うん!行きたいっ。でも私スノーボードはやったことないからな⋯ 出来るかな。」 「出来るよ、爽なら簡単に。」 「なんでよ?」 「だって爽のお父さん、三姉妹の中で爽が一番運動神経がいいっていっつも言ってるだろ?」 もう⋯ お父さんは酔うといつも同じ話をするから。 「それは小学校低学年までの話だからね?」 「ははっ、楽しみだな〜。」 そんな話をしながらご飯を食べてゆったりと寛いでいると柊也は気持ち良さそうに眠ってしまった。 ふふっ、二日間も運動して疲れたんだね。 そう思い、その日は車で来ていたから柊也を起こさないようにそ〜っと帰った。 そして、一週間後。 バレンタインデーのディナーと、柊也の部屋で私が焼いたチョコレートケーキを食べて⋯ 甘い甘い二人の幸せな時間を過ごしたーー。
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